今回は、たくさんの援助を必要としている子どもたち、周りからの理解が得られずに苦しんでいる子どもたちへの理解の手助けになるような本を紹介します。 |
この本は、あとがきにもありますが、いわゆる専門書ではありません。 作者である小児精神科医の杉山登志郎医師が出会った、自閉症・アスペルガー症候群などの子どもたちをたくさんのエピソードをもって紹介しています。その子どもたちは、突然大きな声を出してしまったり、独り言を言い続けていたりする姿が周りの無理解によって、奇異に見られたり、差別されがちですが、その子どもたちの内に、たくさんの豊かな世界があるということ、そしてその子どもたちを大切な一人の存在として認め、愛情を持って理解していくことの大切さが伝わってきます。
2.「実力を出しきれない子どもたち」
NPO法人「えじそんくらぶ」をご存知ですか?
AD/HD(注意欠陥多動性障がい)を持つ人たちや、共に悩んでいる家族・教師の方を応援している団体です。
子どもだけではなく、おとなの方にも参考になる内容です
←クリックストするとリ−フレット(PDF)が見られます
自主的に学ぶことから広がる世界は、義務的に学んだこととは違って、ずっしりと実りが多いように感じます。 |
1.「学校」
山田洋次監督の映画「学校」のモデルとなったものです。様々な事情で、学ぶ機会を得られず、辛酸をなめるような生活の中で社会生活を送ってこられた人々の人生と、夜間中学で真剣に学ぶ姿が生き生きと描かれています。初めてひらがなや漢字、計算を習い、少しずつ自信を増やし、更に学びを深める姿は尊いものを感じます。「学ぶ権利」は「人権」の一つの柱であると実感せずにはいられない内容です。この度、山田洋次監督の解説が入り、幻冬舎文庫から新たに出版されました。
2.「フィンランド式キッズスキル」
キッズ(子ども)のスキル(技能・熟練)の話って何でしょう。子どもが物事に困っていたり、自信をなくしている時、それをクリアするための『スキルを身につけるには何ができるか』と具体的に段階を追って考えることができたら、本人も保護者もより楽しく前向きにそのスキルに取り組めるのでしょう。子どもと話し合いながら取り組むスキルを決めていくことから始め、その作戦に命名したり、スキルを支えるサポーターを頼んだり、晴れて学び終わった時のお祝いを企画したり、成功の秘訣を次の子どもに伝えたりとのステップがわかりやすく書かれています。問題だったはずのことも自分で乗り越えることで実りの多い経験になることが伝わってきてやってみたい気持ちになります。
3.「10代からの子育てハッピーアドバイス」
思春期は揺れ動く年ごろです。そんな子どもの心を見失わないために親や私たちおとなは何ができるのでしょうか。子どもの心配な行動や症状の根っこにあるのは?自立って?反抗するのは?非行や犯罪から最後に守るものとは?イラストを効果的に使ってあります。最終ページを閉じた時は目からウロコ。
(こんなステキな本を書かれた明橋先生にお会いしたくて2008年9月20日(土)に桜木町の健康福祉総合センターにお招きして講演会を行いました。
今回は、自分のことを大切にしながら、相手も大切にするにはどうしたらいいかを考える時にヒントになってくれる本をご紹介します。 |
1.「自分を好きになる本」
「そのままのあなたがいい。
あなたはあなた、それでいい。あなたと同じ人はどこにもいない。
世界中たったひとりしか、あなたはいない。それはすごくすてきなことなんだ。」
友だちとけんかをしたとき、自分に自信を持てないとき、自分を嫌いになりそうなとき、この本を開くと不思議な力がもらえます。この本には自分を好きになるためのヒントがたくさんあります。
自分を好きになり、自分をかけがえのないものと感じることこそ、自分の中にある力を信じることに繋がり、いろいろなことを乗り越えていかれます。
社会の中の様々な問題や歪みを解決する糸口も、まずは“自分を好きになること”の中にあると、この本は教えてくれます。
CAPのエンパワメントの理念と繋がる本です。
2.「怒ろう」
「怒ることはいいことだ」そう言われたら、「えっ、怒ったりしたら
相手を傷つけてしまうでしょ・・」「人間関係がまずくなるんじゃないの」と心配になったり、戸惑う人もいるのではないでしょうか?
「怒り」はとても奥が深いです。「怒り」は自分を大切にしようという気持ちの表れ、そして私たちに様々な事を知らせてくれるサイン
暴力の加害者にも、被害者にもならないために怒りについて知り
同じシリーズの「泣こう」「楽しもう」もぜひお読みください。
「『いのち』の大切さが分かる子に」で公演された近藤先生の著書をご紹介します。 |
「えっ!死んだ金魚トイレに流すってどういうこと?!」そんな思いで読み始めました。
近藤 卓先生はスクールカウンセラーとして子どもたちの声に耳を傾け、寄り添っていらっしゃいます。また、「いのちの教育」を実践される中から、自分の「いのち」、他人の「いのち」を軽くあつかう子どもたちの問題、「いのちの体験」をすることの大切さ、そして何よりも「私は何よりも大切な存在」と一人ひとりの子どもたちが感じて生きていくためのおとなの関わりについて、具体的に書かれています。
あとがきに『子どももおとなも、一人ひとりが、自分は生きていていいのだ、自分は大切な存在なのだ、自分のいのちは何よりも大切なのだ、と心の底から何の疑いもなく確信できること。それが、今私たちがいちばん必要としていることではないでしょうか。
そして、そんな私たちが安心して暮らし、互いに思いやり、ゆったりと先を急がずに生きていけたときに、そんな私たち一人ひとりの思いが少しずつ身近なところから広がっていき、やがて社会全体に、世界中に染み渡っていくのではないか、そんな夢を描いています。(あとがきより抜粋)』と書かれています。
私たちがCAPのワークショップで伝える「安心・自信・自由」をお互いが大切にし合える世界と相通じるものを感じ、一人でも多くの人とこの夢を共有したい、そんな思いで読み終わりました。
2010年11月11日(木) 「『気持ちのワークショップ』ファシリテーター養成講座」を 講師に森田ゆり氏を招き開催しました。 今回の「本の森」は気持ちに関する本をご紹介します。 |
1.子どものための自分の気持ちが<言える>技術
間違いのないように言っておくと、子ども向けの本ではありません。
“気持ち”が大事とはCAPで常々お伝えしていることです。是非生かしていただきたいと思いつつも子どもが自分の気持ちを適切に伝えられるようになるには日々の関わりがとても大切です。親や先生がコミュニケーションについて、こんなことを知っていると子どもの成長がずいぶん変わってくるのではないでしょうか。
事実関係だけでなく、その奥にある子どもの気持ちを考えるための素晴らしいガイドになってくれると思います。
2.「普通がいい」という病
精神科医である著者が精神療法を行ってきた経験から、人の頭と心と体について、いろいろな角度から書かれています。おもしろいのは「怒り」の感情を「お刺身」に喩えているところ。新鮮で余分なものが付いていない「怒り」は食べられるけど、それを心の底にしまい込んで時間が経ってしまったらどうなってしまうか・・・?!
著者がカウンセリングをするときにポイントになっている事や、自分が自分らしく生きるためのヒントがたくさん詰め込まれています。
賀谷恭子さんが、“子どもたちの大好きな絵本”とお話しされた2冊をご紹介します。 |
1.『いいこって どんなこ?』
うさぎのバニ―ぼうやは、お母さんうさぎに何度も、何度も「いいこって どんなこ?」とたずねます。
子どもが「自分らしくありたい」と思う気持ちを主人公のバニーぼうやがことばにして語ってくれ、それをお母さんうさぎがまるごと受けとめてくれる。
子どもたちは、繰り返されるやりとりから、「自分は自分のままでいいんだ」と感じることができ、ホッとするのかもしれません。
2.『ぼく にげちゃうよ』
この絵本は、1942年にアメリカで出版され、70年近く、子どもたちに愛され続けている絵本です。
世界中で、再版され続けているのは、子どもが成長をしていく中で、
「一歩踏み出してみたい」「いろんなことをやってみたい」という気持ちと同時に、「こんなことをしたら・・」と抱える不安をしっかり受けとめてくれる母うさぎの存在に安心感をおぼえるのではないかと思います。
清水真砂子さんは あの『ゲド戦記』の訳者であり、そのほかいろいろな児童文学の翻訳をされています。また、長年にわたり 青山女子短期大学の児童教育専攻の学生に講義をなさっていました。 |
清水さんが 授業で学生たちに「特別な時(誕生日や旅行など、プレゼントをもらったことなど)を除いてあなたのこれまでで一番幸せな思い出は?」と尋ねると 学生たちが心の中にそっとしまわれていた思い出を思い起こし、書いてくれたそうです。
「おばあさんが入院していた時に おじいさんと電車に乗ってお見舞いに行った、おじいさんが私の膝をトントンしてくれた。おじいさんもきっと不安でたまらなったのだろう。でもその後、いろいろな場面で私はおじいさんの、そのトントンを思い出し、なんども励まされた」と、ある学生が記し、その後同じ学生が「先生に言われてそのことを思い出した。考えてみるとあのトントンが子ども時代から今までずっと私を支えてくれたのかもしれない」と話してくれたそうです。清水さんは日常の些細なことが実は私たちを支えてくれている、子どもはその日常にある幸せを受け止める力がある、と言っています。
清水さんは「本にできること」について
・問と答えの間をすこしでも伸ばすこと、広げること
・本の中で 時間・空間を超えて人とつながり、いろいろな人と出会う
ことで世界が違って見える
・本の中に描かれた日常を読み、自分がした体験は人に語るに足る体験
だと知る
・人生は生きるに値する、と伝えていくこと
などお話されました。三つ目のことは上の学生の経験とつながりますね。
この講演会の中で清水さんは何冊もの本を紹介してくださいました。
1.『幸福に驚く力』
「物語の中でいろいろな大人に出会うことでいろいろな思い込みから自由になれた。自分がうんと小さい存在だと知ることが喜びになる、人間ってこんなに素敵なんだ、世界ってこんなに奥行きがあって広いんだと知っていくこと、これは日常の中ではなかなかすべてはできないけれど本を読むことで体験できると思う。」と書いています。
6頁の学生のエピソードなどは この本の中の「自分の小ささを知るということ」という章にも書かれています。清水さんの別の著書の中に次のような一文があります。
「本は私には窓だったのだと思う。子どもの私は閉じ込められていた。いつだって子どもはそうであるように。本がなかったら、私は今いる狭い世界だけがすべてだと思ったろう。本がなかったら、私は学校の先生を含め、日々出会う大人たちだけがすべての大人だと思ったろう。他所にはもっと高貴な魂の持ち主もいれば、もっと卑しい精神の持ち主もいるのだということを知らずに過ごし、人間に、世界に高を括ることを覚えたかもしれない。高を括るのではなく憧れることを、見限るのではなく共感することを、子どもの私は本を通して学んだような気がする」
(『本の虫ではないのだけれど』の中の「子どものときに・・」
よりかもがわ出版 )
2.『まつりちゃん』
両親が多大な借金を抱え、姿を隠して働きに出る中、たったひとりで家に残って暮らす“まつりちゃん” このまつりちゃんと出会って大人も子どもも自分の中の暖かさ、豊かさに気づいていきます。周りの人々はお互いにはつながっていないけれどひとりひとりがまつりちゃんとつながります。そのなかでまつりちゃんはゆったりと安心して生きていきます。幼い子どもがたったひとりで家で暮らし、お父さんは一週間に一度だけ帰ってきて一週間分の食料品を冷蔵庫に入れてまた働きに出かけていく、というほとんどありえない状況を描きながら、まつりちゃんとかかわる周りの人々の感情、心の中に起きる気持ちの描かれ方は本当に細やかでリアルです。一見するとネグレクトともとれる状況の中でまつりちゃんは確かに人に愛され大切にされていることをわかっていて「信じて待つ」気持ちが周囲の人に伝わっていき、それが周りの人を動かしていくのでは・・と思いました。“ささやかな奇跡の物語”です。
3.『そのぬくもりはきえない』
清水さんのいうところのヘリコプターペアレントであるお母さんとその愛情の網の中から歩き出そうとする娘との日々が描かれ、特に小学校4年生である 波(なみ)の折々の気持ちの描かれ方にこの作者は自分が子どもだった時のことを忘れていないことが感じられます。この本を読んだ子どもはこの気持ち、わかるわかる・・と思い、自分のそれまでのもやもやした気持ちがこうし
清水さんのお話の中で「一人でいることをマイナスと思っている学生が9割」という言葉が印象に残っています。子どもの本の中には一人でいる子どもがたくさん登場しますし、一人でいることでゆっくりと考えられたり、一人でいる時にしか出会えない人や物と出会ったり、一人で過ごす時間の豊かさも伝えてくれます。一人でいる時間も大切な時間だよ、と伝えてくれる本に出会ってほしいと思います。
4.『子どもの育ちをひらく
〜親と支援者ができる少しばかりのこと〜』
私が読んで印象に残った内容の書かれている章の見出しを書きますね。
もし、関心を持たれたら図書館で借りて読んでみてください。
・包まれてこそ包むことができる 母を支えるには
・育つとは共同体へ参加できるようになること
・育ちとは困難や失敗を一緒に乗り越えていくこと 人と人の絆を増
やすために
・子ども虐待の落とし穴 子ども虐待ではなく「子育て失調」
・親にも発達という視点を 人を信用するということ
・親の苦労をねぎらうことが始まり 自分をまとめる力を促す
・施設で育つ 子どもを支える人への支援
・GlobalよりLocal Globalは強者の論理
子育てはLocalな世界
・子育てを助ける発想 安心感も支えもない人
支援することの原点
・生きのびるという発想 生きのびる力を育てる
子育ての悩みは、子どもの成長とともに変わっていきます。「こんなんでいいのかな〜」 |
1.『しつけと体罰 子どもの内なる力を育てる道すじ』
森田ゆり 著 童話館出版
日本にCAPを紹介した森田ゆりさんの著書です。この本では、体罰の問題性、
2.『子育てが終わらない「30歳成人」時代の家族論』
小島貴子・斎藤環 著 青土社
3.『こぎつね コンチ』
中川季枝子 作 山脇百合子 絵 のら書房
「永遠の仔」などの作品で知られる天童荒太さんの初の絵本で、児童虐待をテーマにした絵本です。 |
1.『どーした どーした』
天童荒太 文 集英社
主人公は、ゼンという元気な男の子。
この本を読んだ時に、日本にCAPを紹介した森田ゆりさんの
中学1年生のAさんという男子は、中学入学後、いじめにあい、不登校になっていました。ある日、公園のベンチでぼんやりしていると、小学生時代よく遊んだ1学年上のBさんという男子から声をかけられます。
AさんはBさんに今までの出来事、抱えてきた気持ちを聞いてもらい、それをきっかけに少しずつ自信を取り戻し、学校に行けるようになり、「中学2年生になったらクラブ活動も始めたい!」と思うほど、心の力を取り戻すことが出来たという話です。
ある対談で、天童さんが「アイラブユー」に代わる言葉を探していて
何かが変わるかもしれない、温かい社会に近づくかもしれません。
CAP(子どもへの暴力防止)プログラム、子どもワークショップをベースに書かれた絵本です。 |
1.『あなたが守る あなたの心・あなたのからだ』
息子が初めて読んだ後、「この本は、僕にすごく大切なことを教えてくれた」と絵本をぎゅっと胸に抱きしめながら伝えてくれたこの言葉は、私のCAP活動の原動力の1つです。
CAPプログラムをまだ受けていない子どもたちに、CAPプログラムを繰り返し思い出すために、そして安心、自信、自由の権利を知らずに育ったおとなの方にも、ぜひ手に取っていただきたい本です。
注:学校などでの読み聞かせ会などに適した本ではないと思います。
主人公のボイのパパは、怒り鬼に呑みこまれ、火をふいて、燃え始めることがあります。ママもポイもパパも怒り鬼の火を消すことはできません。 |
1.『パパと怒り鬼-話してごらん、だれかに』
ボイは、パパが暴力をふるうのは自分が悪いのかもしれない、ママからは秘密と言われています。でも、勇気を出して、手紙という形で「話す」ことで、家庭に手が差し伸べられます。怒り鬼に呑みこまれてしまうパパに、「怒り鬼よりあなたのほうがもっとつよい、怒り鬼の言いぶんをよく聞いて、友だちになるんだ、そうなることでまるごとのじぶんをとりもどせるんだ」との言葉が続きます。